シーズン途中にチェルシーの新監督に就任したグラハム・ポッター氏。決断した理由と長期政権の鍵は?
チェルシーの2022‐23シーズンがスタートし、わずか7試合の消化でトーマス・トゥヘル監督が解任されるという衝撃のニュースが9月7日に流れた。
前日には、チャンピオンズリーググループステージ初戦となるディナモザグレブ戦で敗戦を喫していたが、ここまで3勝1分3敗と人員整理をしながら何とか成績をキープ。しかし、新オーナー陣は監督・コーチ陣も一新することを決断した。トッド・ボーリー会長はSALTのカンファレンスで、
「トゥヘル氏は非常に才能があり、大きな成功をチェルシーで収めたが、私たちのクラブに対するビジョンは、我々と本当に協力したい監督を見つけることだったんだ。しかし、彼が私たちと同じようなビジョンを見ているかどうか確信が持てず、ビジョンを共有できていないと感じていた。だからディナモザグレブ戦のことだけではないんだ」
と将来オーナー陣が考えるビジョンを“共有”することができなかったことが解任の一番の原因だと明かした。トゥヘル氏側からしても新体制になり、マリナ・グラノフスカイア氏、ペトル・チェフ氏と、共に仕事をしてきた仲間が去ったことで、大きな負担を強いられてきたことは事実。そのような状況で、現場サイドとオーナー陣の間に“溝”ができてしまったことで、今回の解任劇に発展してしまった。
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トゥヘル監督解任から、わずか1日で新監督を招聘
トゥヘル監督を解任した後、次期監督を既に選定していたかのように、ボーリー会長の行動は素早かった。次期監督候補として、ブライトンのグレアム・ポッター氏、PSGを解任されたマウリシオ・ポチェッティーノ氏、またレアルマドリードで指揮をしていたジネディーヌ・ジダン氏の名前が挙がったが、チェルシーの首脳陣はポッター氏を優先的な候補者として考え、すぐにブライトンと交渉。トゥヘル監督解任から、わずか1日で正式にポッター氏が新監督として招聘された。契約は5年と、監督としては長期となり、BBCによるとブライトン側に違約金1500万ポンド(約24億円)を支払う形で、契約を瞬時にまとめたという。
今シーズンのブライトンはポッター監督の元、リーグ戦4勝1分1敗の4位と好調を維持しており、今季の戦いをサポーターたちは楽しみにしていた。そのような中で、チェルシーの監督になるという決断を下した理由は何だったのか。チェルシーで行われた初めての記者会見でこう答えた。
「サッカーの素晴らしさ、そして人生の素晴らしさは、何があるか分からないということなんだ。オーナーとは本当に濃密な話をした。そしてすぐに、彼らはサッカー以外で大きな成功を収め、ここで何かを成し遂げたいと考えていると感じることができた。本当にエキサイティングなプロジェクトで、彼らはクラブを前進させる方法について素晴らしい考えを持っているので、本当にポジティブな気持ちになった。ブライトンを離れ、選手のことを知り、人々と知り合うという点では、めまぐるしい日々だったが、今のところ本当にポジティブに受け止めている。第一印象は良かったし、スタートするのが本当に楽しみなんだ。
チェルシーは伝統があり、チャンピオンズリーグやプレミアリーグでは常に上位を狙うクラブ。今までとは全く違うチャレンジになることは分かっている。自分はヘッドコーチであり、サッカークラブを助けるのが仕事。スウェーデンでサッカークラブを作る機会に恵まれ、そこから得たものは、クラブが常に最も重要であるということ。私たちは、クラブに貢献し、ベストを尽くすためにここにいる」
と新オーナー陣の新たなプロジェクトに共感したこと、またチェルシーという大きなクラブでの監督のチャンスを逃したくないという気持ちから、ブライトンを退団する決断を下し、スタンフォードブリッジに来ることを決意したという。
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ポッター氏の監督キャリアはスウェーデンからスタート
ポッター新監督は、現在47歳。現役時代は、主にイングランド国内の下部リーグでプレーし、1996-97シーズン サウサンプトン在籍時にプレミアリーグでのプレーを経験。しかし2005年、当時30歳の時に、マクルズフィールドタウンで現役を引退。その後は、国内の大学サッカーチームやガーナ代表女子チームのコーチとして指導者経験を積み、2010年12月にスウェーデンリーグ4部エステルスンドの監督に就任。ポゼッションベースの攻撃的なサッカーを展開し、就任から5年で1部リーグに昇格させるなど、注目を浴びていた。
2018-19シーズンには、プレミアリーグから降格したスウォンジーシティの監督に就任。チームは10位に終わり昇格を逃したが、シーズン終了後にブライトンの監督に抜擢され、昨シーズンは9位と、クラブ史上最高の成績を残していた。戦術やチームの作り方について、ポッター監督は、
「戦術的に柔軟で、攻撃的で、ポゼッションベースのチームを作りたい。選手たちには勇気をもって、ミスを恐れないでほしい。ボールを持って、勇気を出して、自分たちのサッカーを楽しんでほしいんだ。選手がサッカーを楽しんでいれば、サポーターも楽しめるだろう。そうやって、クラブは成長していく。プレースタイルで試合に勝てるわけではないが、選手たちにチームのスタイルを信じさせること、そしてそれをうまく機能させていきたい。哲学やアイデンティティといった言葉を並べるのもいいけど、短期的な視点も必要なんだ。試合では結果を出すことが目標であり、勝つためにベストを尽くさなければならない。私の仕事は、何よりもまず相手を理解することであり、その人の成長を手助けすること。人を大切にし、人間関係を大切にし、できる限り正直でいたい」
当初は、9月10日のフルハム戦(アウェイ)がポッター監督の初陣になる予定だったが、9月8日に崩御されたエリザベス女王に敬意を表し、試合は延期。9月14日(日本時間15日)に開催されるCLグループステージ第2戦となるザルツブルクとの戦いで、初の指揮を執ることになった。それに加えて、CLで指揮を執るのも初めてとなるポッター監督。国内リーグではその手腕を見せてきたが、CLという最高峰の大会で結果を残すことができるかに注目が集まる。
シーズン序盤から波乱続きのチェルシー。果たしてポッター監督は、チェルシーで長期政権を築くことができるのか…そのためには、良い成績とオーナー陣との定期的なコミュニケーションが鍵になりそうだ。
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